恥ずかしそうにポリポリと頬をかく青年に、可愛はズバリ尋ねた。

「あなた、妖怪を見たことがあるの?」

「いや、ないね」

「なら描けないじゃない。見たことないのでしょう?」

「まあ…うん…」

なんとも歯切れの悪い回答だ。

今度は可愛がやれやれと溜息をついた。

「全く…それじゃあ描けないのも当たり前じゃない。仕方ないわね。私が協力してあげるわ!」

「え?」

年下であろう少女はトンと自分の胸を叩いてみせた。

「こう見えて私は立派な黒狐を母に持つ善狐なのよ。妖怪と十把一絡げにされるのは正直屈辱だけど、あなたのために私が題材になってあげましょう!」


「………は?」


青年の表情が固まった。