叫ぶなりポカポカと肩を叩いてきた可愛に、青年はやれやれと溜息。
見た目は年頃の娘さんなのに、まだまだ精神年齢は駄々っ子なお子ちゃまのようだ。
「わかりましたっ。言う!言うから」
「よし。言ってみなさいな」
真っ直ぐ瞳を見つめてくる少女。
青年はゴクリと唾を呑んでから、観念したように言った。
「…………妖怪」
「え?」
「だから、妖怪の絵を描きたいんだよ」
可愛の目が点になった。
「妖怪って、あれ?河童とか、鬼とか」
「そう。鳥山石燕って知ってるかい?江戸時代の有名な妖怪絵師なんだけど…俺は彼の絵に惚れてしまってね。自分も挑戦しようと何度も筆を持ってみるんだけど……なかなか、ね」



