「あれ…?白紙?」
意外だった。
そこには何も描かれてはいなかった。
「だから見ても面白くないって言っただろう?」
「なんで真っ白なの?」
純粋に問うと、彼は苦笑しつつ言った。
「なかなか題材が決まらなくてね」
「あら。こんなに綺麗な桜が目の前にあるんだから、桜を描けばいいじゃない」
「………桜じゃ駄目なんだよ」
急に青年のまとう雰囲気が、真剣なものとなった。
「俺が描きたいのは…」
「描きたいのは?」
ドキドキしながら続きを待つ可愛。
しかし――。
「いや、やめておこう。つまらない話になりそうだ」
「え!?そこまで引っ張ってやめるの!?ずるいわ!雄ならば最後まで言いなさーい!」



