今昔狐物語


「なぜ?なぜ飛牙がそのことを知ってるの?」

「見てたのさ。たまたまあの子狐を俺が見つけて、逃がしてやろうした時ちよがやって来たのだ。まさか助けるとは思わなかったぞ」


飛牙は愉快そうに笑った。

そして、とんでもないことを暴露した。


「あの時、もしちよが子狐を助けていなかったら…俺はお前を殺していた」

「なっ!?」

「だが、そうはならなかった」


まるでその存在を確かめるように、彼は全身でちよを抱きしめた。


「だから、お前には感謝している。ありがとう」


何が「ありがとう」なのだろうか。


子狐を助けたことか、もしくは――。



(私を…人間を殺さずに済んで良かったってこと…?)


確実にわかることは、感謝の言葉には悪意など微塵も含まれていないということだ。