ひとしきり笑った後、飛牙は鞠紗の心情をズバリ言い当てた。
「子を育てるのが不安か?」
鞠紗の肩がビクリと震える。
それを見て、飛牙は穏やかに微笑した。
「案ずるな。玖羅加に任せればいい。いや、駄目か。あいつが子供だ。やはり母親が育てるのが一番だろうな」
上手く育てられるだろうか。
鞠紗の不安が表情に出ていたらしく、飛牙がそれを読み取った。
「そう、不安げな顔をするな。大切なのは愛情だ。親が愛情を注げば子も愛情を知る。たとえ周りがなんと言おうと、良い子に育つさ」
飛牙の言葉が優しい響きとなって胸に届く。
(愛情…。そうだよね。大切なのは、私が双子を愛してあげることだ。村の人達がなんて言おうと、私が二人を守って、精一杯愛してあげなきゃ)
曇っていた鞠紗の表情が、ほころんだ。
「…わかりました。ありがとうございます」
「ふっ…自信を持て。そうすればお前も、美しい母親になれる。ちよのようにな…」
そう言うと、飛牙は風のようにその場から姿を消した。
それから鞠紗が玖羅加と再会したのは、この十分後のことだった。



