今昔狐物語



 奥へ奥へ、もっと奥へ。

竹やぶから山の奥を目指して獣道を進む。

鞠紗は前へ前へと足を動かした。


「玖羅加ぁ~!どこにいるのぉ~!玖羅加~!!」


昼間だが、木々が重なり合うこの空間は薄暗い。

鞠紗は日が沈む前に帰ることを考えて、急ぎ足になった。


「玖羅加ぁ~!玖羅――きゃ!?」


不注意で木の根につまずいた。

派手に転びはしなかったが、手と膝が地について汚れる。

「あ、危なかった…」

付着した土をパンパンと払いながら辺りを見回していると、不意に低い笑い声が聞こえてきた。


「くくくっ…」


ゾクリと身体が震えた。

「だ、誰!?」

玖羅加ではない。

玖羅加はこんな含んだような笑い方をしない。

鞠紗は身構えた。

そして――。