今昔狐物語


玖羅加の頬に、一滴の涙が伝った。

「……鞠紗は…鞠紗は、赦してくれるかな…?受け入れて…くれるかな…」

「それは私にはわかりません。奥方に直接尋ねて下さいね。ほら、泣かないで。勇気を出して」

水真馳に目尻をグシッと擦られる。

その時だった。


「あー!水真馳おじちゃん見っけ!」

「見っけっけ!」

パタパタと走ってくる足音と共に子供が二人、姿を現した。

おかっぱ髪の少女と、ポニーテールの少年。

「おや、見つかってしまいましたね」

水真馳は苦笑しながら玖羅加を見た。

「可愛(エノ)と火叉七(ホサナ)とかくれんぼの真っ最中だったのを、すっかり忘れていました」

おかっぱの少女、可愛(エノ)。

ポニーテール少年、火叉七(ホサナ)。

彼らは黒狐の嵐華と化け狐の阿多羅の子供で、れっきとしたお狐様である。

玖羅加のように人間との混血ではない。