今昔狐物語


玖羅加の顔が苦痛に歪む。

水真馳は一瞬目を見開いたが、またすぐにスッと細めた。

「なら、なぜ生ませたのです?彼女が心配なら、子供を作らなければ良かったでしょう」

少し責めるような口調に気圧されつつも、玖羅加は正直に語った。

「……止められなかった。僕は鞠紗のことが、ずっと好きで…。彼女が結婚しても、諦められなくて…夫に成り済まして、子供まで…」

後悔の念が押し寄せる。

狐との混血児が村人達に受け入れてもらえるわけがない。

自分達とは違う異形のモノを嫌う彼らは、村というコミュニティーからよくわからないモノを排除しようとする。

実際、女性達は赤ん坊を抱くのさえ嫌がった。

床に転がされていた我が子を思い出して、玖羅加はきつく目を閉じた。

「水真馳の言う通り…子供なんて作らなければ良かったのかも。子供なんかいなければ、鞠紗は…」