今昔狐物語



 修平は一人、山の中をさ迷っていた。

ぐるぐると、同じ場所を何度も歩き回る。

「玖羅加、どうしたんですか?」

不意に木々の間から声が聞こえた。

「水真馳…」

現れたのは、おじの白狐だった。

「また悩み事ですか」

うなだれている甥っ子に、ニコニコと微笑みかける。

そんな水真馳を見て、彼は本来の姿に戻った。

長い黒髪に、切れ長の目、金色の瞳。

術を解いた玖羅加の真の姿。

「奥方にバレそうですか?また私が貴方に成り済ましましょうか?」

ずっと修平に化けていた玖羅加。

鞠紗に疑われる度に水真馳に頼んで、鉢合わせのシチュエーションをでっちあげていた。

つまり、水真馳が玖羅加に化け、玖羅加が修平に化けていたのだ。