今昔狐物語


「待って…!しゅ…玖羅加っ」

起き上がろうとした鞠紗だが、母親に止められた。

「まだ安静にしてなさい」

「ん…でも…」

今、彼の傍にいてあげなければいけないような気がしてならない。


(玖羅加…)


けれど、身体が辛いのも本当で。


「お母さん…赤ちゃん、こっちに」

「はいよ」

放置されていた赤ん坊を抱き、母親が双子を鞠紗の隣に寝かせてあげる。

産婆や他の女性達は祝いの言葉も言わず、早々に部屋から出ていった。

「お母さんは、気持ち悪くないの?」

抱っこも嫌がられた双子の赤ん坊を、母親は抵抗もなく抱き上げてくれた。

「なに下らないこと気にしてんの。この子達はあんたの子。私の孫よ?可愛いに決まってるじゃない」


母親の言葉が胸にストンと落ちてきた。


嬉しくて、安心して、鞠紗はボロボロと泣き出した。

「鞠紗、よく頑張ったわね。おめでとう」

温かい祝福の言葉。

産んで良かったと、鞠紗はこの瞬間に初めて思った。


「あり、がとう…お母さん」