今昔狐物語


「しゅーちゃん…」

彼にかける言葉が見つからない。

鞠紗は修平から視線を反らした。

そんな鞠紗を見て彼が近寄ろうとした時、足元に置かれた双子を発見した。

「?」

誰も触れようともしない、生まれたばかりの赤ん坊。


「あんたの子だよ。ほれ、抱いてやりなさい。醜い異形の子さ」


冷たく産婆が言った。

時が止まったかのようだった。

彼は固まったまま、その双子を凝視した。

「おぎゃあ!おぎゃあっ!」

元気な可愛らしい双子。

「おぎゃあー!おぎゃー!!」

けれど、決して祝福されることのない双子。


「あっ…あぁ…」


彼は逃げ出した。

堪えられなかった。

女性達からの責めるような視線が、刺のように全身に突き刺さり、痛い。

イタい――。