今昔狐物語




 東から太陽が昇る。

暗闇の世界が照らされ、狐火が消える。

朝の訪れだ。


「ん…」

ちよは洞穴に差し込む日と、優しい鳥の声にぼんやりと目を開けた。

「わた、し…いつの間に…」

眠りについた記憶がない。

昨夜は確か、泣きつかれて飛牙の胸で…。


「あのまま寝ちゃったんだ…」


そういえば、飛牙がいない。

兄の死体もない。


「どこ行ったのかな?」

ここでちよはハッと気づいた。


(逃げ出すなら今しかない!)

帯は見当たらないので諦めるが、この絶好の機会を逃す手はない。

ちよは洞穴から顔を出し、辺りをキョロキョロと見回した。


(いない…。よし)


と思ったその時。


「どこへ行く?」


「ひゃああ!?」


ガサリと草を掻き分けて飛牙が姿を現した。