今昔狐物語


認めた。

自分が事件の犯人だと彼は認めたのだ。


「そ…ん、な」

身体から血の気がひく。


「やはり細い男はまずいな。…ん?どうした、震えているぞ」

ゆっくりと近づいてくる飛牙。


「ちよ、俺が恐ろしいか?」


この残酷な問いに、ちよは夢中で首を縦に振る。

着物の乱れを気にする余裕などないほど、彼女は怯えていた。


「正直な娘だ。くくっ…案ずるな。お前は喰わぬ」


ちよの艶やかな黒髪に赤い指を絡める。


「ちよは俺の嫁だからな」


血塗れの腕(カイナ)に抱きしめられる身体。

ちよは迫る恐怖に涙を零しながら叫んだ。


「ぃ…やっ!いやぁあ!!私、あなたの嫁になんかならない!!人を食べたあなたなんかと!!」