今昔狐物語



 この日も蛍は変わらぬ吉原での一日を過ごしていた。

姐である夕霧につき、彼女の手伝いをする。

この時も丁度、夕霧から頼まれたものを買って帰ったところだった。


(ええっと、一度夕霧姐さんの部屋に戻ってから…)


考え事をしながら道を歩いていると、自分のところの妓楼の前に、見覚えのある人影を見つけた。


「あ!!」

考えるよりも先に声が出ていた。


(あの尻尾の旦那!)


蛍の短い声が聞こえたのか、水真馳が振り返る。

「おや」

驚いた表情をした水真馳だったが、すぐに優しげな笑みに変わった。

「ん?水真馳、その娘か?」

「ええ。きっと飛牙の尻尾も見られてますよ」

妓楼の前でこそこそと喋る彼らをまじまじと観察する蛍。


(うわあぁ…。昨日の旦那も綺麗だけど、後の二人もすごく…)