今昔狐物語


その後、浮気か浮気じゃないかで言い争いを始めた二匹。

なかなかつかない決着にいい加減耐え切れず、傍観していた水真馳が言った。


「ならば、遊真は女郎を抱かずに帰ればいいでしょう?」

「…もとよりそのつもりだ。ゆき以外の女など、この身体に触れた瞬間八つ裂きにしてくれよう」


「…………やはり、遊真を連れていくのやめません?下手したら女郎が数人死にます」

「…仕方ない。俺達三匹で行こうか」

飛牙は、水真馳だけは逃がすまいと鋭く白狐を睨みつけた。

「わかってますよ。私は行きますから」

やれやれと溜息をつきつつ、水真馳はまたあの蛍という遊女に会えることを願った。

自分で気をつけろと言っておきながら、彼は警戒以外の気持ちを抱いているのだ。


(会わない方が穏やかでしょうが…)


どうにも心が疼いて仕方がない。


彼女に今一度、会いたいと…。