今昔狐物語


「俺は行かないぞ!嵐華様がこんな時に、花街など…!」

阿多羅の妻、嵐華は現在妊娠しており、もうじき出産らしい。

ゆえに、安静にということで今回の集会も欠席したのだ。


「確かにな。阿多羅は嵐華の傍にいてやるといい」

飛牙も、そこは彼の意を汲んだ。

「俺も、行かぬ」

これは遊真だ。

「遊真は別に問題なかろう?」

「俺は浮気はしたくない」


真剣な瞳で、彼は手に持っている髑髏を撫でた。

いつでもどこでも愛しの妻、ゆきの頭蓋骨を手放そうとしない遊真。

その愛は他人から見れば狂気以外のなにものでもない。


「遊真、郭(クルワ)遊びは浮気じゃない」

堂々とそんなことを言ってのけた飛牙。

「愚かものが…。浮気だ」

それに対して遊真も強気で反発する。