今昔狐物語


そんな親子を見て、水真馳は親切心から忠告した。

「気をつけて下さい。女郎に見鬼(ケンキ)がいましたから」

「見鬼…?」

玖羅加が首を傾げたので、阿多羅が説明する。


「見えざるものが見える人間のことだ」

「ようするに、霊感が強い者だな。水真馳、女郎に尻尾でも見られたか?」

飛牙があてずっぽうに言ったことだったが、水真馳はずばり言い当てられて冷や汗をかいた。


「…はい。見られましたよ。蛍という娘です」

「それはそれは…。この俺でも気をつけなければ、なあ…?うっかり尻尾を掴まれたら大変だ」

皮肉げな飛牙の言葉。

「冗談ではありませんからね?飛牙」

「ふふ。なら、水真馳の言葉が真か、皆で確かめに行こうか」

飛牙の突拍子もない提案に、一同、驚きの声をあげた。