今昔狐物語


玖羅加の父である飛牙が息子を呼んだ。

「何?父上」

「お前もそろそろ発情期だろ?花街での遊びを覚えなさい」

父の言葉に玖羅加は固まった。

確かに、もう玖羅加も良い年頃だ。

少年期は過ぎ去り、大人狐の仲間入りをしても差し障りない。


「僕が、花街に…?」

「嫌か?一匹で心細いなら父がついて行ってやろう。色々と教えてやるぞ?」


最愛の息子に妖艶な流し目を送る。

この目で見つめられて落ちない女はいないだろう。


「父上、亡くなった母上に申し訳なく思わないの?」

「ちよは女郎とは違うからな。欲を吐き出すだけの雌と愛しい女は別物だろう?」


飛牙の達者な口に、玖羅加は負けた。

「わかった………行くよ」


「ふふ、楽しみだなぁ」