今昔狐物語


確かに、彼女達の言う通りだ。

美しく、どこか儚げで神秘的な男。


「別嬪さんだね。うらやましいくらい」


蛍はそう感想を述べて襖から離れようとした。


が、その時、見てしまった。


(ん?何、あれ…)


別嬪客の頭に獣の耳が見えた…気がした。

目を擦って、もう一度見てみる。


(う…嘘…!?)


やはり微かに白い獣耳が見える。

「み、耳が!!」

「は?蛍、どうしたのさ」

仰天して思わず声をあげていた蛍。

「耳だよ!あの旦那の頭に、獣の耳が!!」

小さい声で言ったつもりだったのに、意外と大声だったらしい。

周りにいた遊女達全員に聞こえてしまったようだ。


「どれどれ!?」

「うそ~!見えないけど~?」