今昔狐物語


明らかに不機嫌になった飛牙などお構いなしに、ちよは大きな声で兄を呼んだ。


「お兄ちゃ~ん!!」

「ちよ!!」


洞穴の近くまで来ていた兄はちよの声に直ぐさま反応した。

呼び声を頼りに洞穴の中へ入ろうとしたが…。


「ちよ?大丈――ぐぁああ!!」


怒りの形相で現れた飛牙に首を掴まれた。

「俺とちよの初夜を邪魔するな」

物凄い握力で絞め殺そうとする。

けれど、できなかった。

「飛牙!やめて!お願い!!」


しどけない格好のちよに抱き着かれたのだ。

胸元から覗く発展途上の乳房。

甘い薫りを放つ白い肌。

雄の心をくすぐり、理性を崩壊させる涙で潤んだ瞳。