ねぇ、ミツキ。
ミツキにとって、命って何だったの?
生きることにも死ぬことにも、意味なんてないと、哲学者のようなことを論じて。
あのときミツキがボクに伝えようとしてたことって何?
どちらにも意味がないと言っておきながら、ミツキが死ぬことを選択したのはなんで?
やっぱり、いじめのことがあったから?
それとも、病気で絵を描けなくなるかもしれなかったから?
生きることに意味がないと言うのなら、なんでボクに「追ってきちゃダメ」なんて手紙を残したの?
でもそうだよ、ボクは君のあとを追うつもりだった。
だってボクは、まだ君に伝えてないことがあったから。
あのね、ミツキ。
ボクは小さい頃からずっと、ミツキのことが好きだった。
ずっと、ミツキのことを守りたいと思ってた。
でも、いざというときボクはミツキのことを守れなかった。
ボクは、優しい人間じゃなかったから。
偽善に溺れるのが怖くて、手を差し伸べるのを躊躇った。
ミツキのすべてを受け入れる覚悟がまだ出来ていなかったから。
ボクなんかがミツキに釣り合うはずもないとも思っていたから。
だから、何も知らないふりをして、ミツキの隣にいられるだけで幸せだった。
ミツキの絵を眺めていられるだけで幸せだった。
こんなことを言ったら、それも全部ただの幻想に過ぎないなんて言われそうだけど。
でも、今なら思うよ。
そんな都合のいい幻想の中で、
ボクはミツキと生き続けていたかったんだって。



