幼馴染が死にました




――ねぇ、ミツキ。知ってた?猫って、死ぬ間際に飼い主の前から姿を消すんだって。

――知ってるよ。それが何?

――自分が死ぬ姿を飼い主に見せないようにするんだよ?飼い主を悲しませないためにさ。

――それ、本気で言ってる?

――え?

――そんなの、ただの偶然でしょ?偶然外に出たときに死ぬ猫が多いってだけ。飼い主を悲しませないためなんて、そんなこと猫が考えてるわけないでしょ。

――ミツキって、ホント冷めてるよね。

――私はただ、事実を述べているだけ。猫に限らず、人も同じ。人の死も本当は意味なんて何もないのに、誰かが死んだら、周りはその人の死に何か意味を持たせようとするでしょ、後付けで。

――意味を、持たせる?

――そう、何か重要な意味を持たせるの。生まれて死ぬっていうその過程に意味なんて何もないのに、人はその事実に耐えられないから。だから、運命とか、尊いとか、英雄とか、偉大なるとか、まぁそんな便利な言葉で、その死を飾りたてるの。そうやって、自分の命を正当化してるのよ。

――やっぱり冷めてるよ、ミツキは。

――そうかな?私はそうは思わないけど。でも、死とか命とかにあまり幻想を抱きすぎると、それ自体が見えなくなっちゃうよ。

――よく分からないんだけど。

――つまり、生きることも、死ぬことも、無意味だってことを忘れるなってこと。

――それはちょっと言い過ぎじゃない?

――そうだね。無理やり意味を見出すのが、生きることだって、この世界では位置づけられてるもんね。

――何それ、ミツキって中二病?

――そう、私中二病なの。だからね、この世界が嫌い。

――ミツキには絵があるじゃん。ミツキにとって生きる意味は、絵を描くこと。違う?

――ヒロも頑固だね。言ってるでしょ?生きることにも、死ぬことにも意味なんてない。あるのは都合のいい幻想だけ。

――じゃあ、ミツキはなんで絵を描くの?

――それは―――…