いつも笑顔で、弱さを見せないようにして。
普通の女子高生を装っていたミツキ。
絵の才能で、周りの大人からいくら特別扱いされようとも、ミツキはずっと“普通”に憧れていた。
その他大勢の中に埋もれていくことを望んでいた。
それなのに。
神様はまた、ミツキに“特別”な宿命を与えていたというのか。
やるせない思いに、胸を締め付けられる。
「ミツキが死んだのはいじめが原因じゃなくて、病気のことがあったから?」
自殺の原因はいじめだと勝手に決めつけていたけれど。
でも、病気のことを知った今、分からなくなった。
ミツキが死んだ、本当の理由。
「分からない。でも、前にミツキが言ってた、死後の世界を描いてみたいって」
「死後の世界…?」
正直ゾッとした。
「そのためにわざわざ死んだってこと?そんなくだらないことのために!?」
「湯川くんにとってはくだらないことでも、ミツキにとっては命よりも尊いことだったかもしれない。でもそれは、今となっては分からないこと。こんなこと、今更議論しても意味ない」
はっきりとした声で言葉を紡ぐ谷村さんの両目は、いつの間にか涙でいっぱいになっていた。
「ミツキはもう、死んだんだから」
ダムが決壊したように、次々と彼女の頬を涙が伝う。
ボクはその場に立ち尽くしたまま、その光景をただただ茫然と眺めていた。
彼女にかけるべき言葉は見つからなかった。
何を言っても、何をやっても、虚しさだけが胸の中に広がって、身体全体をじわじわと蝕まれていくような感覚しか残らない。
どうしようもなくなったボクはふと、ミツキの在りし日の姿を思い浮かべていた。
そうだ。
あれは、いつのことだっけ。



