『琢磨でしょ。何で逃げるの?』
鎌吉が必死に呼び止めると、琢磨は、観念して立ち止まった
『…』
『いつ日本に戻ったの?』
『…』
『…何も答えないんだ。…玉子ずっと待ってるよ。会う為に約束叶える為に、めちゃくちゃ勉強してさ』
『…』
『帰ってきてるなら、会えばいいじゃん。何で連絡しないの?』
『…』
『何回か琢磨をみかけた。でも琢磨いつもスーツじゃないね。仕事…辞めたの?』
『…』
『…私に答えなくてもいいけど、玉子には話しをしてよ。今呼ぶから』
『呼ばなくていい。』
『…何で?ずっと待ってんだよ』
『待たなくていいと伝えてくれ。待ってると思わなかった。仕事も辞めたし…そんな男との約束守らなくていいって…。』
『琢磨』
『俺はそんな約束忘れたよ』
行こうとする琢磨の後ろ姿に鎌吉は…
『ずっと絵葉書持って、大事に持って、会える為だけに、あんたの為だけに、毎日頑張ってんだよ。それなのに、忘れたなんて、ふざけんじゃねぇよ。逃げんなよ』
最後は声にならない声で叫んだけど、琢磨は振り返らず、去ったらしい
『たくちゃんが、そんなこと…』
古くからの付き合いの梅ちゃんも、かなり動揺していた

