俺がえのきを好きだなって意識したのは、夏の暑い日だった


俺が部活に行く時に、えのきが一人、校庭にしゃがみこんで、なんかブツブツ言ってた


『えのき、何してんの?』


『あっ、篠田。部活?』


『うん』


『暑いのにお疲れだね。でも、このアリオ君も凄いんだよ』


アリオ…君?


『この、アリオ君がさぁ、こんな高い階段を上ったり降りたり凄い事だなと思って、感心してみてんの』


『アリにとっては、とてつもなく、高い壁だよな』


『うん。そやのに、獲物を持ったままの移動だよ、食べるのに命かけてると思わん?私らなんて、帰ったら温かいご飯苦労しなくても食べれるのにさ』


命かけてるか
確かにね
えのきらしい発想だね


『だから、お父ちゃんやお母ちゃんに感謝して、ご飯頂かなきゃね。このアリオ君も、我が子の為に働いてるんだよ。父親は大変だ』


『何で、アリオ君なわけ?アリコちゃんかもよ』


『お父ちゃんは外で家族の為に働くでしょ、この食べ物をお母ちゃんに届けて、調理してもらうから、これはアリオ君だよ』