「とにかく、兄貴がいる間。 お前は絶対、俺からはなれんなよ」 そして田中は、あたしの手から乱暴にカバンを奪い取ると 「お前歩くの遅い」 仏頂面でそう言って、スタスタと歩き始めた。 「………」 思わずその場に突っ立ったまま、茫然とするあたし。 「……だから!遅いって」 痺れをきらしたように、田中が振り返る。 「……あ。ご、ごめん……!」 だって。 深い意味はないって。 わかってるけど。 (絶対、俺からはなれんなとか……!) キュン、としちゃうじゃないですか。