赤絨毯が敷かれた中央階段からゆっくり降りてきた、ダークグリーンの綺麗な長髪を揺らした一人の女性。

豊満な胸を漆黒のドレスで際立たせ、柔らかく妖艶な雰囲気を醸し出している女性の回りには、大勢の男たちが寄ってきている。


鋭い視線で近寄り難い雰囲気も漂わせているが、彼女を目当てに来ている者が七割を占めている。

それほど彼女は絶世の美女であり、力を持つ“ヴァンパイア城”の“城主”なのだ。


「是非とも……と、言いたいところだけど、色々準備もあるから。ごめんなさい」


ゆったりとした丁寧なエルヴィンの断りに、貴族の男たちは惜しくも笑顔で了承し、サッと未練を残さず散っていく。

それが男として当たり前だと思っており、それが格好いいと勘違いしているのだろう。


エルヴィンはふっ……と、息をつき、少し頭を垂れて、すぐに顔を上げた。

何かを思い出したように二階へと足早に駆け上がり、踊り場から左右に伸びる廊下を右に折れ、急ぎ足で自室の扉を開いた。