菊乃丞の言葉に反応し、 入り口に立つ桐島様が俺の手を握った。 「桐里を桐島園から遠いところへ 逃がしてあげてくれ。 悲劇は繰り返したくはない」 親の顔をした桐島様は俺に諭すのだ。 「桐里が好きなんだろう。 だから晩餐に来なかった。 君なら…秋良勢源から桐里を守られる」 「…桐島様…」 「もしもあの男から娘を救えられたなら、 婿に迎え入れてもよい」 それは願ってもない条件だった。 桐里に報告する前に、 焦りすぎている表情を油断できなかった。