「何故嘘という…。 俺の心を疑うのか? もしも早くに桐島様に言ってしまったら、 葵屋には行けなかった。 お前を独り占めなんて出来なかった」 ぽろぽろ、 桐島様の雫が畳を水玉柄にし、 「なら…どうして…、 私にそれ以外の嘘を言うのですか…?」 口惜しいと感じたのは 霧里太夫に出会ってから何度も、 「恋愛を知らないままの方がよかったのです」 人心に疎い俺を遠ざけ啖呵を切る。