まただ、 また自分は大声で叫んでしまったようで、 野次馬を含め役者たちにも 冷やかしてくる声を耳にした。 赤面する太夫が優しい顔で笑ってくれた。 「桐島園は改めて立てるつもりであった。 金がかからず取り壊せたよ」 「…桐島様っ、 私たちは桐島様についていきます!」 大らかな桐島様は出来た人間だ。 俺であれば自分の舞台を壊されたら、 あのような態度は無理であるが…、 「…お父様って とても素晴らしいお方ですね」 手を結ばれた桐里の微笑みは、 残していきたいと仏に願ったのだ。