涙を拭い、応接室のドアを開ける。

あたしは今から嘘つきになるの。

「太田君」

「会長!」

太田君が嬉しそうな顔で振り返る。

だけど、優しい言葉はかけてあげないわ。

「早く帰りなさい」

「会長を待ってる」

「帰りなさい」

「ヤダ。待ってる」

「命令よ。今すぐ帰りなさい。約束でしょ?」

命令という約束があるんだもの。

こっちは無敵なんだから。

帰れと睨むけど、太田君は動かない。

なんで?