「よろしくねっ!橘さん!」
「……うん、よろしくね」
もっとあたしに勇気があれば。席替えが終わってもそんなことを考えて。
むーんとした雰囲気を気にしていない、という風に隣の席の人……えーと、相澤くんが喋りかけてくる。
あたしクラスの男子に特別な用事以外で喋りかけられたの初めてかもしれない。入学初日パンチからのスタートだったもんね。
「ねぇねぇ、橘さんってかわいーよね。俺ずっと前から思ってたんだ」
「……はあ」
「愛梨ってよんでもいー?」
「……はあ」
「じゃ、早速。愛梨」
「え、………な、なに?」
じっと見透かすように相澤くんがあたしを見る。………そして。
「英和辞典貸してくんない?」
「…………………………は?」

