「いち、に、さん。いち、に、さん…」


歩数を数えながら一歩、また一歩と足を進ませる。足場の不安定なパイプ管の上で赤龍の子・朱火は暇を潰していた。

ここは闘技場の野外。ほとんどの生徒がノイジー・ファイトを観戦しているため、朱火の辺りはシンと静まり返っている。


「いち、に、さん…いち、に、さん…」


とてとてと覚束無い朱火の足取りでは、今にもパイプ菅の上から落っこちてしまいそうである。
ほら、余所見をするから。

ツルッ

「?! う、わ、わわわっ!」

落ちる!
そう思って目をぎゅっと瞑った、その時。


「危ない危なーい。小さい子はほんっと危なっかしいよねぇ」

「え、ごめん、兄さん。聞こえない」

【おチビちゃんは危なっかしいってね!はげどう、はげどう】


ぽすんっ、と朱火の体が何者かに受け止められた。
てっきり地面に落ちるかと思っていたから、いきなりのことで朱火は疑問符を浮かべるばかりだ。

一体誰が助けてくれたんだろう?
振り返るとそこには-、


「どうもー、こんちわでーす。いきなりだけど『ワタル』って子、どこにいるか知ってるかい?」

「…誰?」


おんなじ顔をした3匹の、緑のサルがいたのであった。