本来蒼いはずのオーラがドス黒い。恐らく怒っているのだろうが、まあ当然だろう。
溺愛しているワタルの身体を傷つけられたのだ。しかも、なんと痛々しい始末。
「ふ、ふふ…、わての可愛いワタルはんの身体に傷つけて、ただですむ思うなよ蛇野郎…」
<お、おいリャオ?>
「わてを怒らせたことっ、後悔させたるッ…!」
拳を握り立ち上がる療杏の額には、くっきりと青筋が浮かび上がっている。
それに気づかずまたその巨体で近づいてきた朱龍の、嗚呼なんと哀れなことか。
「グルルルルルッ…」
「ふ、ふはっ、あははははは!あんたに痛い目見したるっ…!ワタルはんの身体に傷つけたあんたに、倍以上の苦しみ与えたるわっ…!」
「キシャァァアアアアアッ!」
「っ…如々律伺昂甲咳ッ、去ねや赤蛇糞野郎ーッ!」
世界が、大きく震えた。
「…で、何があったか説明してくれるよね?リィ」
「はい…、ほんますまへんでした…」
「え、ごめん聞こえないもっかい言ってよほら早く」
「堪忍しとくれやすぅぅううう!うわーんっ、ワタルはんわてを嫌わんといてぇーっ!」
決着のついた療杏に待っていたのは、ワタルの長い長いお説教であった。
身体から療杏が抜け、ワタルが意識を戻したまではいい。
しかしそこに見えた光景に、ワタルは絶句するしかなかった。
燃える校舎。
氷に覆われた大地。
電気を帯びる植物。
おまけに目の覚めたワタルのすぐ近くに、姿の小さくなった人型のりゅうが倒れていたのだ。
りゅうはボロボロ、見た目が5歳ばかりになった彼に何があったのか。
そこで豪蓮に話を聞いたところ、療杏がブチギレ暴れたせいでこうなったというのだから目眩がする。
従者の不始末は主のせい。
ワタルが学園側に呼び出されるのも、時間の問題だろう。
「リィ、俺前に言ったよね?俺のことで過保護になるのはいいけど、簡単に人を傷つけないでって」
「そ、そいつは人やないし危険な龍やし…」
「言い訳も屁理屈もいらない。りゅうが目を覚ましたら、ちゃんと謝りなさい」
「あい…」
正座をし、しょぼんとうつ向く療杏だがこうなったのは自分のせい。大人しくワタルの指示を受け入れようと肩を落とした。
そこへ、ワタルの左手がぽんと療杏の頭に置かれる。撫でられる感触に思わず療杏は顔を上げた。
「へ?わ、ワタルはん…?」
「うんうん。反省してるならいいんだよ。それにこうなったのは、きっと俺を守るためだったからでしょ?
ありがと、リィ」
「っつ、わ、わたっ、………ワタルはん大好きぃぃいいーっ!」
「うわああっ?!」
ぎゅうううっと抱きつく療杏に、仕方ないなと背中を撫でるワタルもとことん甘ちゃんである。
お前らはどこぞのカップルだ、他所でやれ他所で。と豪蓮が居心地悪く腕を組んでいたことは、言うまでもない。


