しかも当のワタルは何事もなくしれっとしているのだから二人は声を荒げずにはいられない。

ワタルを育てた師匠として、ここまで育ってくれたことを嬉しく思う反面、ここまで育ってくれたことは予想外であった。

良くて7年、悪くて10年かかると思われたワタルの修行も3年で終わり、力の蓄えも凄まじい。
しかしワタルにとっては特に興味もないらしく。

「異世界にチートはつきものでしょう!」キラーンとドヤ顔をかますワタルに
「意味わからん」冷たくあしらってしまうのも致し方ない。

というかチートとはなんぞ?と二人は首をかしげるばかりであった。

これはジェネレーションギャップというより国際的な問題だろう。


「二人とも学校学校!うおっしゃああ学校まで競走だぁぁー!」

「元気どすなあ…」
「ついていけねえ…」


朝は厳しい妖怪二人にとって、ワタルのテンションはうざい以外の何物でもなかったという。













「おおお、ここが学校…!」

「この国屈指の実力派エリート校だぞ。いや、この世界か」

「いつ見はっても大きいどすなあ」


三人が見上げる先には、白い壁で囲まれた校舎。
学校というか、城に近いんじゃないかなとワタルは密かに思った。

中世の貴族の城を思わせる校舎に向かう生徒たちの髪色は様々だ。それだけ出身が違うということだろう。


「! リィ、レン。あの子耳生えてるっ、動物の耳!ホントにいるんだねえ…」

「『ホントに』? ってことはワタルの世界じゃ滅多に見れねえもんだったのか」

「滅多にっていうか、まず空想上の生き物だったからね。いたらいいなっていう妄想かな?」

「そういうもんか」

「そういうもんです」


世界が違うと常識は通じない。

ワタルの世界で当たり前だったこともここでは否定されるし、ここの世界もワタルの元いた世界では妄想だろうと鼻で笑われる。

それは少し寂しい気もしたが、こうやってこの世界に来てみると新しいことばかりでワタルの心は弾んでいた。


これからここで生活する。
知らない人と仲良くできる。

そう思うだけで頬がゆるむのだ。