「朔君のお陰で売り上げは上がってるし、順調と言えると思うわ」

 そう答えると、あからさまにホッとした空気がその場に流れた。私は苦笑してまたテレビに目を向ける。

 ビーズやレースやキルトを加工したりして、それに銀や金の小物をつけたアクセサリーなどを販売している。それは基本的には口コミで伝わった人達の間だけで、売り上げはようやく自分の分の家賃になるかどうかってほどだった。
 
 だから悔しいけれど、私は元夫が別れる時に大量に振り込んできたお金で生活を支えて貰っていたのだ。足りない分を、少しずつ引き出して使う。彼が懸命に倒れるまで働いたお金を自分が使うのは非常な抵抗があった。私ではなく、誰かの為に使いたい、そうずっと思ってきて、そのためにはやはり収入を増やさなくてはならない。

 ここ3年でアルバイトに出たこともあったけど、いつも疲れて熱を出し、職場に迷惑がかかることが多くて辞めてしまったのだ。私には何が出来るのか、そう考えて沈みまくっていた日々を乗り越え、やはりもうちょっと強くなろうと、考えに考えて始めたのがアクセサリーの販売なのだ。

 それを、パソコンの専門業をしているネットオタク(姉曰く)の従兄弟の朔朗君に勧められて、インターネットでも販売することにしたのだ。手作業で一つずつ作るので、時間がかかる。それで今までは二の足を踏んできたことだった。だけど、ネット販売に手を出すのも考えてみたら?と誘われてどうしようかなと悩んでいた夜、そこで、あの男の人の声を急にハッキリ思い出したのだった。


 3つのR、やってみたら?