「ふたりは学校から帰る途中、交通事故に巻き込まれてしまいました。男の子は軽傷でしたが、女の子は半年も入院しその後もリハビリ生活を送らなければならないほどの、重傷を負いました」
清水先生は淡々と語る。
感情の読めない横顔をして。
「男の子は女の子を守れなかったことに大きな責任を感じ、ふさぎこみました。そしてそんな男の子に対して、女の子も同じように負い目を感じるようになりました」
「なんで? 別に女の子がそんな気持ちになる必要ないじゃん」
「まあ聞け。女の子は男の子が大好きでした。だから自分のケガのことを気にして落ち込む彼を見るのがつらかった。だから女の子は、入院中も退院後も、いつも笑顔を絶さないと決めました」
傷などなんともないのだと
わたしはまったく気にしていないのだと
だからきみが気に病む必要もないのだと。
「女の子は事故前より強くなりました。自分の痛みには蓋をして、傷は見てみぬふりをして。そうして男の子の笑顔を取り戻したのでした」
めでたしめでたし。


