「誰が勝負なんてするか!」


「ははは! なんだ光太郎。自信ないのか?」


「ちっげえー!」


「じゃあお先に!」


「言い逃げすんなー!」




小津くんは笑いながら廊下の向こうに消えていった。



うん。相変わらず小津くんは、何を考えてるのかわからない。


あたしたちはそろって、疲れたようなため息を吐いた。





「……帰るか」


「……うん」




顔を見合わせ、笑う。


自然と手と手が重なり合う。




大好きだよ、コウ。



あたしはあたしが好きだけど、


自分以上にたぶん、コウが好き。




あたしを傷だらけって言ってくれる、コウが好き。




中学最後の文化祭は、綺麗な夕暮れとともに終わった。