沙弥が困ったようにこっちを見てるのには気付いたけど、
小津くんがおもしろそうにニヤニヤしてるのにも気付いたけど、
とにかくあたしはいますぐこの場から逃げ出したかった。
ステージを降りようと階段に向かいかけた時、
手を思いきり引っぱられて、くるりと前を向かされたと思ったら……
「!!!?」
コウの腕の中で、ほっぺにちゅーをされていた。
……なんで?
なにがどうなってるの?
それをあたしの頭が理解するのに、けっこうな時間がかかった。
「逃がすかよ。ばーか」
頬から唇が離れた途端、そう言ってニッと笑ったコウ。
歓声とも絶叫ともつかない生徒たちの声が体育館をびりびり揺らした。
そんな中で、あたしはただひとり固まっていた。
コウの腕の中で、かちこちに。


