あたしはそれどころじゃなくて。
うれしくて、どうしようもなくうれしくて。
顔を覆って、泣いた。
よかったね、沙弥。
がんばったね。
がんばった。
本当に、本当に……。
「そうですか! お相手がわからないのは残念ですが、仕方ありませんね。続いて準ミスの藤村さんに話を……あれ? 藤村さん? どうしたんですか?」
実行委員の男の子が、慌てたように聞いてくる。
「え? 泣いてる?」
男の子の手が肩に置かれて、体育館がいままでとはちがったざわつき方を始める。
あーいけない。
こんなとこで泣いたりしたら、せっかくの盛り上がりが台無しじゃん。
沙弥ががんばったんだから、あたしも最後までがんばんないと。
あたしはぐいっと涙をぬぐって、顔を上げた。
「……大丈夫です。ちょっと負けて悔しかっただけだから」
「そ、そうですか! いやあ、でも藤村さん! かなりの僅差で準ですよ! 驚きました!」
「当然でしょ? ま、転校してきたばっかだし、こんなもんよね」


