お金はいらない。 沙弥の幸せを見届ける。 コウのその義務、あたしも手伝う。 だから、沙弥が幸せになったら……。 そのあと、少しでいいからあたしのことも見てくれる? そんな気持ちは口にできないまま、コウの指にそっと触れた。 波がふたつ、寄せて返したあと、 コウの手が優しくあたしのそれに重なった。