「わたしが事故に遭ってから、光太郎は前みたいに笑わなくなったの」
「コウが?」
あのコウが?
ああ、でも。
前に清水先生がそんなことを言ってた気がする。
「光太郎のせいじゃないのに、わたしが怪我をしたことにも、傷が残ったことにも、光太郎は責任を感じてた」
「……その傷って、消えないの?」
微笑んで、沙弥は自分の長いスカートをまくりあげた。
白くて細い太ももがあらわになる。
息が止まった。
そこには大きな、沙弥の脚を切り裂いたような大きな傷が残っていた。
「これでもけっこう綺麗になったんだ。本当は、もうそんなに気にしてないし」
「嘘だ。前にあたしが言ったことに、沙弥は本気で傷ついてた」
「少しはね。でも、この傷を見ると事故の恐怖も思い出すけど、良いことも思い出すの」
「良いこと?」


