それって……
なんだかコウが、あたしのことを考えて怒ってくれたように聞こえるんですけど。
沙弥のことじゃなくて、あたしのことを考えて。
本当にそう思っていいの?
「あ、あたしは別に、気にしないし! 関係ない奴に何言われてもどうでもいいっていうか。あることないこと噂されるのだって慣れてるしっ」
「そういうのやめろ」
「え……」
突然声を低くしたコウ。
なんでまた怒るの?
「もう少し周りの目を気にしろ」
「あたしみたいな超美少女は、周りの目なんて気にしてらんないの」
「それでも気にしろ。沙弥だってお前よりはずっと気にしてる」
また沙弥って……!
いい加減にしろって怒鳴りそうになった時、
「ひゃ……っ」
海風が強く吹き付けて、あたしの髪を巻きあげた。
海の香りと昼間の熱の残りを乗せた風。
髪が肩におりてきた時、コウの右手がそれをひとふさ手にとった。


