可愛くないって言わないで!!



やっぱりコウが自転車を停めたのは、あの海岸線。



防波堤に並んで腰かける。


足元のテトラポットもオレンジに染まっていた。


沈んでいく太陽が、なんだか目に沁みる。



コウは水平線を見つめたまましゃべらない。


このままじゃあっという間に陽が沈む。




「コウ」



そっと名前を呼んだ。


さざ波に打ち消されそうな声だったけど、コウはちゃんとこっちを見てくれた。



「まだ、怒ってる?」


「んー……まあ、ちょっと」


「なんでそんなに怒ったの。やっぱり、沙弥を傷つけたから……?」


「お前なぁ……」



真剣に聞いたのに、コウの右手が伸びてきて



「いった!?」



長い指におでこを弾かれた。



「なにすんの!? 超痛い! 絶対赤くなる!」


「痛くしたんだよ。お前があほなこと言うから」



あほにあほって言われた!


最悪だ!