可愛くないって言わないで!!


そう言って乱暴にあたしの腕をとって、自分の腰に回させるコウ。



う、うわ……!


なにこの密着度!



「いや、これはちょっと……」


「遠慮すんな。っつーかちゃんとつかまらねーと落とす」


「なんで!?」



あわててコウの腰にしがみつく。



うーわー!


コウのお腹固い! 腹筋固い!



「そうそう。ちょっとスピード出るけど大人しくしとけよ。絶対落とさねーから」


「さ、さっきは落とすって言った!」


「そうやってしがみついてりゃ落とさねーよ」



コウが笑う。


しがみついた身体が揺れる。



こっそり頬をつけると、コウの笑い声がこもって響いてきた。


あったかい……。




かくん。



一瞬うしろにのけぞった。


自転車が坂道に入った。



いつも歩いている通学路。


長い長い、海の見える坂道。