バシンと広い背中を叩いてから、自転車の荷台に飛び乗った。
乱暴に乗ったのに、自転車は揺れも傾きもしない。
ムカつくなあ。
「行くぞ。ちゃんとつかまってろよ」
「わかってるってば」
サドルの下あたりをつかむ。
それを確認してから、コウはゆっくりと自転車をこぎだした。
思ったよりも安定した自転車のうしろの席。
揺れの不安はなくなって、あたしはちょっとどきどきしながらコウの背中を横目に見る。
ペダルをこぐたび背中の筋肉が動くのが、Tシャツの上からでもなんとなくわかる。
細身に見えてたけど、こうして改めて見ると、けっこう男らしい体格なんだ。
「真衣。そろそろ坂だぞ。もっとちゃんとつかまっとけ」
「え。もっとって?」
「俺につかまっとけって言ってんの。マジで落ちるぞ」


