暑さの落ち着いた放課後。
あたしは進路指導室をあとにして、駐輪場にいた。
沙弥はとっくに帰って、いまはあたしひとり。
すぐそばには、アイツの銀色の自転車がある。
「まだかなー……」
さっきサッカー部らしき集団が校門を出ていくのが見えたから、
きっとコウもそろそろ現れるはず。
しゃがみこんで、小枝でなんとなく“コウ”と書いた。
その隣りにあたしの名前。
コウに向かって、一方通行の矢印を書く。
この矢印がもう一本、コウからあたしに伸びればいいのに。
スカートのポケットにいれた包みがカサリと鳴る。
渡せるかな……。
「……真衣?」
砂を踏む音と一緒に、ちょっとびっくりしたような声。
あたしはあわてて地面に書いた文字を消して、立ち上がった。
青いジャージ姿のコウは、まだ少し不機嫌そうな顔をしていた。


