ざわついていた廊下が、水を打ったみたいに静まりかえっていた。
目の前の子たちは、みんな青ざめて震えてる。
それくらい、いまのコウは恐い。
あたしも動けなくなるくらい。
なんで……
なんでそんなに怒ってるの?
昨日より、コウはずっと怒ってる。
なんで?
「うわ。なんの騒ぎだ?」
その時、張り詰めた空気を抜くような、のんびりとした声が割って入った。
小津くんだ。
床に散らばったゴミを見て目を丸くしてる。
その隣りには沙弥もいた。
すぐに動いたのはコウだ。
小津くんの胸倉を昨日のようにつかむと、
「だから言ったんだよ! 宗介、てめーのせいだからな!」
そう凄んで小津くんを突き飛ばすと、
肩を怒らせ教室に入っていってしまう。
小津くんと沙弥は目を合わせてから、問いかけるようにあたしを見た。


