「お前さあ……」
あたしに背を向けて、うつむいたままコウが呟く。
波の音に負けそうな小さな声。
「ほいほい宗介なんかについてってんじゃねーよ」
……はあ?
ほいほいって、
「ちょっと。あたしの話聞いてた?」
「聞いてたよ。聞いたうえで言ってんだよ」
眉間にこれでもかってくらいシワを寄せて、
仏頂面でコウが振り返る。
「宗介は沙弥のオトコなんだぞ」
「知ってるってば。だからその沙弥が……」
「そーじゃねえよ。お前は全然わかってねえ」
「なにがわかってないっての!? 沙弥が小津くんに代理を頼んだんだからしょうがないじゃん!」
「沙弥沙弥沙弥ってうるせーよ! お前どんだけ沙弥が好きなんだよ!」
「はあああああ~?」
沙弥沙弥うるさいのはどっちよ!
ふざけんな!


