「ねえ。怒ってるの?」
「……別に」
「あのね。今日本当は沙弥が高校の案内をしてくれる予定だったの。でも急な用事が入ったとかで、代理で小津くんが来てくれたんだよ」
「ふーん」
ふーん、て。
なにその気のない返事。
「小津くんは沙弥に頼まれて来ただけで、あたしも気乗りしなかったけど、沙弥が言うならって一緒に回っただけだから」
「それで?」
「それでって……だから、あんたの大事な幼なじみは全部わかってるから大丈夫ってこと」
沙弥のことを考えて怒ったくせに。
あたしがまた沙弥のこと傷つけるって思ったくせに。
小津くんに手を出す女だって。
それがいちばんムカつく。
ムカつくって言うか……傷つく。
胸の奥の方が、切られたみたいに痛い。


